アサンジ氏の現在
ウィキリークス創始者のジュリアン・アサンジ氏は、現在、英国ロンドンのベルマーシュ刑務所に拘留され、米国へのスパイ容疑による米国への身柄引き渡しがされるかどうかという段階にある。ベルマーシュ刑務所は、イングランド、ロンドン南東部のテームズミードにある厳重警備の男子刑務所。カテゴリーAの刑務所に分類され、最も危険で有名な犯罪者だけが収容される。
BBCがイギリスのグアンタナモと呼ぶ、ベルマーシュ刑務所
2021年7月末から7日間行われたベルマーシュ刑務所の抜き打ち検査報告書によると、刑務所の指導者たちは、刑務所の文化を改善するために、さらにやるべきことがあると認識していた。
例えば、多くの職員は日常的に、身体装着型カメラの回収や電源を入れるのを怠っており、最も弱い囚人を監督するはずの職員が、座って新聞を読んでいた。刑務所内は概して秩序が保たれ、落ち着いているように感じられたが、暴力のレベルは、新型コロナによりほとんどの囚人が独房から出る時間が制限されているにもかかわらず、前回の査察以来、暴力のレベルは上昇していた。刑務所は、受刑者の暴力と刑務所側の実力行使に関するデータを収集していたが、暴力削減のための効果的な戦略の策定を支援するために利用されていなかった。暴力削減会議は1年以上開かれていなかった。黒人や若い囚人への力の行使が不均衡であり、異なるグループへの適切な計画がなかった。
刑務所の自己評価報告書(SAR)では、暴力事件が減少したとされていたが、実際には、刑務所の囚人の数が減少したため、暴力率は増加していた。
刑務所は自傷行為の増加に対して十分な注意を払っていなかった。これらの囚人の安全を確保するために、この分野で緊急の措置を講じる必要があった。
働いていない52%の囚人は、1日23時間を独房で過ごしていた。
読書指導を志願した2人の男性は、訓練も教材も支援も受けられなかった。
刑務所の将来について強いビジョンを持っていたが、これを実現するためには、上級チームを強化し、最も弱い立場にある囚人のケア、効果的な安全戦略など、いくつかの重要な分野について、より厳格な監督を行う必要がある。
アサンジ氏がロンドン・ベルマーシュ刑務所に入ることになった経緯
アサンジ氏は、2010年にスウェーデン国より国際逮捕状が出され、居住地の英国で逮捕された。しかし既に支援者が多くあり、その保釈金により、一度保釈されていた。ところが英国の最高裁が、スウェーデンへの身柄引き渡し判決を下したため、スウェーデンのバックに米国がついていると判断したアサンジ氏は、エクアドル大使館に亡命した。
スウェーデン国の国際逮捕状の罪名はだから英国での罪状は、保釈中の逃亡である。2012年6月のことである。それからアサンジ氏は、2019年4月までロンドンのエクアドル大使館に居住していた。
2019年4月11日、エクアドル大使館はアサンジ氏の亡命認定を突如取り下げ、大使が警察を大使館に招き入れ、英国メトロポリタン警察がウェストミンスター判事の代理としてアサンジ氏の逮捕状を執行したという(警察の発表)。アサンジ氏はそれから4年以上もロンドンに拘留されている。
(↑ 国連のによれば、中南米では認められていても国際法上は一般的に認められていない外交的庇護権の行使であったから、という話のようだ。それを当事国4か国が認める認めないといったことがあったらしい。) 文書
米国に引き渡されて有罪判決を受けた場合、アサンジ氏の弁護士は最高175年の懲役刑の可能性があると述べている。アメリカ政府は、判決は4年から6年になる可能性が高いとしている。
国連人権高等弁務官事務所の「恣意的拘禁に関する作業部会」は、2016年2月5日、「ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジ氏は、2010年12月7日にロンドンで逮捕されて以来、スウェーデンと英国によって恣意的に拘禁されている」と発表している。専門家パネル(委員団)は公開声明で、スウェーデンと英国の両当局に対し、アサンジ氏の自由の剥奪をやめさせ、同氏の身体的完全性と移動の自由を尊重し、補償を受ける権利を与えるよう求めた。「恣意的拘禁に関する作業部会」の意見は、市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)のような拘束力のある国際人権法に基づく限りにおいて法的拘束力を有し、欧州人権裁判所を含む著名な国際司法機関や地域司法機関からも権威あるものとみなされている。
ICCPR(市民的及び政治的権利に関する国際規約)は、生存権、信教の自由、表現の自由、公正な裁判を受ける権利など、基本的人権の概要を定めた国連の条約である。アメリカ合衆国はこの条約に加盟しており、1992年に批准している。しかし、米国はこの条約に関していくつかの留保を付けており、条約の特定の条項に拘束されないとしている。
具体的には、Kristina Ashさんの論文「U.S. Reservations to the International Covenant on Civil and Political Rights: Credibility Maximization and Global Influence」(Journal of Human Rights、2005年)によると、6ページ目の一番上
The U.S. made reservations to the ICCPR’s provisions on prohibition of war propaganda, capital punishment, cruel, inhuman or degrading treatment, criminal penalties, and juveniles. (米国は、ICCPRの戦争宣伝の禁止、死刑、残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱い、刑事罰、少年に関する条項に留保をつけた。)……
今、アサンジ氏を応援する人々は?
現在、ウィキリークス・サイトには主に、2007年から2019年までのデータが公開されている。アサンジ氏は、2012年6月から2019年4月に逮捕されるまで、米国の逮捕を恐れて、ロンドンのエクアドル大使館に亡命していた。ウィキリークス・サイトは稼働しているが、実際のところ、情報収集はアサンジ氏がいなければ進まない。アサンジ氏のもつ技術はどちら側にとっても重要なのである。
アメリカが国連の指示を聞かないとなると打つ手はないのだろうか。実際誰かどうにかしてくれないのだろうか。
アサンジ氏はオーストラリア国籍である。(アサンジ氏は2018年1月にエクアドル国籍を付与された。しかし、その後2021年7月にエクアドルによって国籍が剥奪された。)
よって、オーストラリア国が外交によって助けるか、米国が自発的にあきらめるしか道はない状況だ。
オーストラリア・アルバニージー首相
2022年12月20日、日経アジアに、オーストラリアのメディア・アドバイザリー会社(メディアとコミュニケーションに関する戦略立案事業)Random Ax Mediaの創設者 JJ Rose氏がアサンジ事件を終結させるよう求めるオピニオン記事「Albanese is right: It is time to close the case of Julian Assange——Australian prime minister’s move may signal end is near for WikiLeaks legal saga」を寄稿している。ここには、オーストラリアのアルバニージー首相が国会で「私の立場は明確であり、米政権にも明言しているが、この問題は終わらせる時である」と答弁したことが書かれ、首相が介入したことで、間違いなく世界で最も注目されている良心の囚人であるアサンジ氏の釈放が動き出すかもしれない、と書かれている。
また、次のようにも書いていた。「現在、米国は、中国やロシアとの世界的な広報戦で道徳的優位を確立しようとしているので、アサンジ氏に手にかけるのは意味がない。米国はいつでもアサンジの引き渡し要求を取り消すことができる立場にある。特筆すべきは、アサンジ氏のウィキリークスにイラク戦争とアフガン戦争に関する米政府資料を公開する際に極めて重要な役割を果たしたチェルシー・マニング氏が、2017年に刑期35年から7年に減刑され、現在は、自由の身となっていることだ。」
ロバート・ケネディ・ジュニア氏
2024年の米大統領選に民主党から立候補しているロバート・ケネディ・ジュニア氏は、ジョン・F・ケネディ第35代大統領の甥で、2023年4月に大統領選への立候補を正式に表明したが、立候補表明後すぐ、勝利の暁にはウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジ氏に恩赦を約束する、と言明した。(スプートニク、2023年5月3日)
(引用)
Robert F. Kennedy Jr
@RobertKennedyJr
Instead of championing free speech, the U.S. actively persecutes journalists and whistleblowers. I’ll pardon brave truth-tellers like Julian Assange and investigate the corruption and crimes they exposed. This isn’t the Soviet Union. The America I love doesn’t imprison dissidents. #FreeAssange #Kennedy24() 2023年5月3日
米国は、言論の自由を擁護する代わりに、ジャーナリストや内部告発者を積極的に迫害している。私は、ジュリアン・アサンジのような勇敢な真実の語り手を赦し、彼らが暴露した腐敗や犯罪を調査するつもりだ。ここはソビエト連邦ではない。私が愛するアメリカは反体制派を投獄しない。
教皇フランシスコ
2023年6月30日、教皇フランシスコはアサンジ氏の妻や家族と面会し、2021年にアサンジ氏本人に手紙を送った時と同様に力づけた。
(記事)「Stella Assange tells Francis of husband’s ‘cruel’ imprisonment」(THE TABLET、2023年7月5日)
教皇フランシスコはアサンジ氏の妻と面会したその五日後、7月5日に、米国元大統領クリントン氏と面会した。クリントン氏の一行には、ジョージ・ソロスの息子が含まれていた。
(引用)
「バチカンは会談の詳細を発表していないが、フランシスコ法王はジョー・バイデン大統領との良好な関係を利用して、アサンジ氏の窮状をめぐって米当局に影響を与えることができるかもしれない。」
「Pope Francis hosts Bill Clinton, foundation head Alex Soros」(CNA、2023年7月5日)
教皇が動くことはあるとはいえ、なぜ何度も行動して下さるのか。
実は、ウィキリークス2019年1月30日記事「Pope’s Private Letter Reveals Early Involvement in Power Struggle」によると、教皇フランシスコは、2016年から2017年頃、「理論的にはカトリックの機関としてローマ教皇の権威に服するはずであるにもかかわらず、それ自体が主権を持つ存在として広く認められてきた」マルタ騎士団のトップと闘っていた。
教皇フランシスコは、2013年からの現職教皇だが、2017年1月にマルタ騎士団(改名し正式には「マルタ主権軍事勲章」)の当時「プリンス兼グランドマスター」であったマシュー・フェスティング氏に「退位」を要請した。
というのは、その1カ月前に、マシュー・フェスティング氏が騎士団の大総長アルブレヒト・フライヘル・フォン・ベーゼラガー氏を解任していたからである。(解任されたベーゼラガー氏のwikiに、その解任理由が書いてあるが、wikiにはミャンマーでと書いてあるところ、ウィキリークスにはアフリカでと書いてある。)
ともかく、この一件は世間的には、教皇フランシスコ vs 保守派のマルタ騎士団グランドマスター(の側にいたレイモンド・バーク枢機卿)の権力闘争だとみられていた。しかし、ウィキリークスは、この教皇書簡は、教皇がバーク枢機卿と面会した少なくとも2016年11月以来、この論争を認識していたを示す、としながら以下の内容も記している。
(引用)
この物語にさらに陰謀を加えているのは、教団の高位メンバーの何人かが、フリーメーソンのロッジや、教会が疑わしいとみなすその他の組織にも出席しているという噂である。
Pope ordered Card. Burke to clean out Freemasons from the Knights of Malta(ローマ教皇はバーク枢機卿にマルタ騎士団からフリーメイソンを一掃するよう命じた)(Catholic Citizens、2017年1月11日)
教皇フランシスコは書簡の中でこう述べている。
「特に修道会の会員は、カトリックの信仰に反する、および/または相対主義的な性質を持つ団体、運動、組織への加入など、世俗的で軽薄な(中略)行動を避けなければならない。」
そして、そのような組織のメンバーは教団から排除する必要があると述べている。
教皇フランシスコは、アサンジ氏(ウィキリークス)が教皇の意図を理解しているとみて、何度もアサンジ氏を助けようとしているのかもしれない。
6月9日(金)グレン・グリーンウォルド氏「アサンジ氏、絶体絶命」
しかし、2023年6月9日(金)ジャーナリスト、グレン・グリーンウォルド氏のRumble番組「システム・アップデート」によれば、アサンジ氏は危機的状況だ。
「Assange With Almost No Moves Left ——US Trial Could Be Imminent.(アサンジ氏、ほとんど打つ手なし——米国での裁判が間近に迫っている可能性)」

!! グレン・グリーンウォルド氏:スノーデン氏に関する報道でピューリッツァー賞を受賞したジャーナリスト(His work contributed to The Guardian’s 2014 Pulitzer Prize win;Pulitzer Prize-winning journalist)。日本語版は『暴露:スノーデンが私に託したファイル』(新潮社、2014年)。
イラクとアフガニスタンにおける米国と英国の重大な戦争犯罪と、その同盟国の汚職を明らかにした極秘文書を公開した罪。1917年のスパイ活動法に基づく、スパイ容疑である。
よほどの予期せぬ出来事がない限り、アサンジ氏はヴァージニア州の裁判所で、スパイ活動法に基づく重罪の裁判を受けることになるだろう、とグレン・グリーンウォルド氏。
以下は番組内のグレン・グリーンウォルド氏の言葉をかいつまんだものである。
スパイ活動法は(第28代アメリカ合衆国大統領)ウッドロウ・ウィルソンによって最初に施行された法律であり、アメリカが第一次世界大戦に参戦し、戦闘員として戦うべきという考えに反対するアメリカ人の意見を犯罪として取り締まる法律であった。そして実際、多くの人々が、ヨーロッパ戦争におけるウィルソン大統領の戦争政策に反対しただけで、スパイ活動法により訴追された。
この法律が露骨に違憲であるという理由でこの法律を覆そうとする努力もあったが、裁判所はこの法律を守ってきた。この法律は合衆国法の中で最も過激で抑圧的な法律だが、ずっと休眠状態に置かれてきた。
ニクソン政権は、ペンタゴン・ペーパーズ(米政府がベトナム戦争について米国民に組織的に嘘をついていたことを明らかにした最高機密文書)をリークした罪で、ダニエル・エルズバーグ氏を起訴するために、この法律を使用した。
つまり、アメリカ政府は何年もかけて、戦争に勝利し北ベトナムを打ち負かすまであと数カ月だ、必要なのはあと少しの資金、あと少しの徴兵、あと少しの権限、あと少しの爆弾、あと少しの武器だけだ、と公に主張していたが、ペンタゴン・ペーパーズで明らかになったように、内々では、アメリカ政府とペンタゴン内部の高官たち、そしてアメリカの安全保障国家における戦争遂行機関のトップたちは、戦争が始まった当初から、勝利は不可能であり、最大の、そして最善のシナリオは膠着状態であることを認めていた。
エルズバーグ氏はランド社に入社し、ベトナム戦争の擁護者であり、ランド社での立場からベトナム戦争の計画を手伝った人物である。
60年代半ば、彼は、アメリカ政府が、嘘に基づいてこの戦争を遂行し、ベトナムに志願せず徴兵された、何千人ものアメリカ人の命を終わらせ、何十万人ものベトナム民間人の命も奪っていることに気づいた。
良心の呵責から、彼は名乗りを上げて言った。「アメリカ政府がアメリカ国民に嘘をついているという証拠を手にしていながら、それを隠蔽し続けることは、もはや我慢できません。」
彼はまず、上院議員にペンタゴン・ペーパーズを読み上げさせようとした。憲法上、上院議員は上院議場での言動について訴追を完全に免除されているからだ。しかし、それを実行する勇気のある議員は一人もおらず、何人かがエルズバーグ氏に任せた。
彼はついにニューヨーク・タイムズ紙を訪れ、これらの文書を提供した。
ニューヨーク・タイムズ紙がそれを報道すると、次の政権は、ウィルソン時代のこの古臭い法令を掘り起こし、エルズバーグ氏が外国政府のために行動していなかったことを、エルズバーグ氏の最も厳しい批判者たちが認めていたにもかかわらず、それを使ってエルズバーグ氏がスパイ行為で有罪になったと言おうとした。次の政権はしばらくの間、エルズバーグ氏がクレムリンのエージェントだと主張しようとしたが、誰も信じなかった。
エルズバーグ氏はジャーナリストのところに行き、アメリカ国民に真実を知らせるためにこの情報をリークした。
ニクソン政権は結局、エルズバーグ氏を起訴しようとしてもうまくいかなかった。というのもニクソン政権は、ダニエル・エルズバーグ氏の精神科医のオフィスに侵入し、彼の信用を失墜させるような心理的秘密を見つけ出そうと命令するなど、さまざまな重大な不正行為に手を染めていたことがバレてしまったからだ(これは1971年のこと)。そしてその不正行為によって、彼に対する刑事事件は却下された。そうならなかったら、彼はほぼ間違いなく残りの人生を刑務所で過ごしていただろう。
エルズバーグ氏は現在93歳。末期の膵臓がんと診断され、余命は短くとも数週間である。しかし、彼が歴史に残したことのひとつは、この非常に抑圧的な法律の存在と、この法律が、アメリカ政府の手中にある貴重な道具となった理由について、アメリカ政府に思い起こさせたことである。
「1917年のスパイ活動法」の下では、どんな文書でも、「機密」や「極秘」や「極秘」と印をつけるだけで、その文書を持ち出し、世間に明らかにすることは重罪となり数十年の懲役刑となる。たとえ、誰かが、自分自身の犯罪や欺瞞を隠す意図で機密扱いにして権限を乱用したとしても。
エドワード・スノーデンが訴追され、現在も起訴されているのもこの法律である。
この法律に基づいて起訴された人々は、機密情報を許可なく公表したことが証明されさえすれば、基本的に必然的に有罪となる。
1917年のスパイ活動法を危険なものにしているもう一つの点は、米国政府で働いたことがなく文書の機密を保持する義務がない人々を起訴するために使用することもできることだ。つまり、受け取って公表したジャーナリストを起訴し犯罪者にするために使うことができる。
ジュリアン・アサンジ氏の場合、オバマ政権はアサンジ氏をスパイ活動法で訴追しようと必死だった。彼らは大陪審を招集し、アサンジ氏の調査に何年も費やしたが、アサンジ氏が同じ文書を公表している世界有数のメディアと連携して仕事をしていたため、これらの文書を公表しただけではアサンジ氏を罪に問えないことは最初から分かっていた。
オバマ司法省は、アサンジ氏が何か犯罪行為そのものに関与したことを見つけたかったが、何も見つからなかった。その結果、オバマ政権はアサンジ氏を起訴したくてもできず、起訴するつもりもないという結論に達した。
トランプ政権に入り、特にマイク・ポンペオ氏はトランプの最初のCIA長官だった。ポンペオ氏は、ある種のポピュリストやMAGAイデオロギーの信奉者であるかのように見せかけたが、完全に欺瞞に満ちていた。下院議員時代の投票記録を見ると、彼はオバマ政権によるシリアのバッシャール・アル=アサド政権打倒のための秘密戦争を含む、アメリカの戦争をことごとく支持していた。そして、マイク・ポンペオ氏は2017年にCIA長官として立ち上がり、私がこれまで聞いた中で最も不気味で威嚇的なスピーチを行った。その中でポンペオ氏は、ウィキリークスを破壊するために、不眠不休で全力を尽くすと誓い、「ウィキリークスは、自分たちには憲法修正第1条の報道の自由と言論の自由の権利があると信じているが、そうではない」として、トランプ司法省にアサンジ氏を起訴させるために精力的に働いた。そして起訴した。1917年のスパイ活動法に基づく犯罪で彼を起訴したのだ。
2021年Yahoo!の報道によると、ポンペオ氏のCIAは、アサンジ氏を誘拐して連行する計画、あるいは殺害計画さえもっていたという。(FOX News、7月8日土曜)
起訴状を読むと、起訴状にはアサンジ氏が2016年にやったこと、ヒラリー・クリントン氏陣営やジョン・ポデスタのメールに関連する文書の公開とは何の関係もない。彼らがアサンジ氏を憎むのは、ヒラリー・クリントン氏の資料を公表して2016年の選挙で負ける手助けをしたことを、いまだに非難しているからだ。だから民主党は彼を嫌う。
起訴自体は2010年に公表されたイラク・アフガニスタン戦争ファイルに関するもので、そのファイルには、イラクで米軍がロイター通信の記者2人を含む民間人を無差別に銃撃し殺害したビデオなどが含まれていた。
また、アメリカやイギリスが犯した、その他の戦争犯罪や、アラブ諸国を含む世界中のあらゆる場所でのアメリカの同盟国側の腐敗を明らかにするあらゆる文書が含まれていた。
アサンジ氏が同世代で最も優れたジャーナリストの一人であるという事実が、スパイ活動法に基づいて彼を起訴することを米メディアが支持している大きな理由であることは断言できる。
さて、2019年、この起訴状が公開され、その後修正されたとき、起訴状には、アサンジ氏が単にチェルシー・マニングからこれらの文書を受動的に受け取り、それを公開したにとどまらなかったという主張がある。しかし起訴状は、ウィキリークスがこれらすべての文書を入手した時点で、アサンジ氏がその入手に何の役割も果たさなかったことを認めている。
チェルシー・マニングは軍法会議にかけられ、懲役8年か、実際にはそれ以上の刑を言い渡された。オバマ大統領は、彼女が7年間服役した後、結局彼女の刑を減刑したが、彼女がどのようにしてこれらの文書を入手したかという事実は、その手続きの中で示された。彼女はイラクに行き、アメリカ政府がイラクの反体制派に対して行っていることに非常に心を痛めた。彼女は、私たちが民主主義のためにイラクで戦っていると思っていたのに、人々が即座に投獄され、メディア機関が閉鎖されていることを知った。ランド社の内部で働いていたダニエル・エルズバーグ氏や、NSAやCIAの内部で働いていたエドワード・スノーデンと同じように、彼女は、自分が信じていた神話が実は間違っており、アメリカ政府の行動は、バランスから見て、正味の害悪であると確信した。彼女は自分で資料をすべてダウンロードし、ジュリアン・アサンジ氏に送った。政府もそれを認めている。
では、どうしてこの起訴状は、ジュリアン・アサンジ氏が公開以上のことをしたと主張するのか?なぜなら、アサンジ氏がこれらの資料を手に入れたとき、優秀なジャーナリストなら誰でもするように、彼は2つのことをしたからだ。1つ目は、もっと報道できるように、もっと入手するよう彼女に求めたこと、そして、彼が報道できるように、システムに戻って他の資料をダウンロードし、彼に送るよう彼女に勧めたことだ。世界中の調査報道ジャーナリストは皆、情報源から『あなたに提供したい資料があります』と言われたら、そのジャーナリストはこう言うだろう。これも持っているのか』『これがあれば最高だ』『それは手に入るのか?』 世界中のジャーナリストはみんなそうしている。つまり、アサンジ氏が非難されている2つのことのうちの1つは、彼が機密情報の単なる受動的な受信者である以上に、その公開者であるということにある。彼女は言われたそれらをしなかったにもかかわらず。そしてもうひとつ、彼が告発されているのは、彼女が発見されずにシステムを利用できるよう、パスワードの解読を手助けしようとしたことだ。言い換えれば、彼は情報源である彼女が発見されないように手助けしようとした。
しかし、このパスワード破りは失敗に終わった。彼女にはできなかったのだ。
メディアが描こうとしたことに反して、アサンジ氏は、これらのファイルにハッキングしたり資料を持ち出した者として告発されても、いない。彼はハッキングする必要はなかった。チェルシー・マニングは、米陸軍の二等兵として業務上、これらの資料にアクセスすることができた。彼女は資料をダウンロードしたが、どれも機密の程度は非常に低いレベルのものだった。
つまり、アサンジ氏が告発されているのは、情報源にもっと多くの資料を入手するよう促し、彼女が捕まらないようにするためのヒントを与えた、という2つのことである。
この起訴が発表された2019年、私(グレン・グリーンウォルド氏)は『ワシントン・ポスト』紙に寄稿し、アサンジ氏に対する見方がどうであれ、すべてのジャーナリストはこの起訴に猛反対すべきだという論説を書いた。すべての責任あるジャーナリストは、情報源に捕まらない方法を教える権利があるだけでなく、義務もある。もしそれが犯罪化され、ジャーナリストが情報源と「共謀」することになれば大変なことである。
バイデン政権は、ジュリアン・アサンジ氏を強制的に米国に送還しようとしている。彼はアメリカ市民ではない。米国政府で働いたこともない。アメリカ政府の秘密を守る法的義務もない。それなのに彼らは、1917年に制定されたスパイ活動法の下でアサンジ氏を物理的にアメリカ本土に連れてきて、陪審員がアメリカ安全保障国家の諜報員であったり、米国政府のために働く人々で構成されることがわかっているバージニア州の法廷で、裁判にかけようとしている。この法律は厳格な責任法であり、無罪になる可能性はほとんどない。
英国の裁判所は過酷な環境だが、米国政府が乗り込んできてアサンジ氏をそのような過酷な条件下には置かないという保証を提供したため、英国の裁判所はバイデン政権に有利な判決を繰り返し、アサンジ氏の身柄を引き渡さなければならないという判決を下した。
英国のプリティ・パテル内務大臣は、アサンジ氏の米国への身柄引き渡しを承認した。
6月6日に出された3ページの判決文の中で、スウィフト判事という一人の判事が、2022年6月に当時のプリティ・パテル英国内務大臣が署名した身柄引き渡し命令に対するアサンジ氏の控訴の8つの理由すべてを却下した。
これ以上の上訴は英国国内レベルでは不可能だが、アサンジ氏は欧州人権裁判所に提訴することができる。
ジョー・バイデン司法省は、ジュリアン・アサンジ氏が米国で裁判を受けることを本当に望んでいるのだろうか?
米国とそのメディアは、ジャーナリストを攻撃する他国政府を非難するのが大好きだが、まさに米国の地で、彼らが裁判にかけ、終身刑にしようとしている姿が全世界に映し出されることになる。1917年に制定されたスパイ活動法により、現代最も影響力のある先駆的ジャーナリストを。
この状況を打開する唯一の方法は、アサンジ氏が生まれた国であり、彼が市民権を持つ唯一の国であるオーストラリアが、アサンジ氏は一度もアメリカの市民権を持ったことがない、と言うことだ。
リベラル派が彼の起訴を正当化し、反逆罪だと言っているのを見ると、私は驚いてしまう。誰に対する反逆なのか? 地球上の誰もがアメリカ政府に忠誠を誓う義務があると思っているのだろうか。
オーストラリアはアメリカのかなり従属的なジュニアパートナーだ。つい最近まで、自国民の権利を守るために非常におとなしく無口だった。オーストラリアの首相はかなり新しいが、バイデン政権はアサンジ氏の訴追を止める時だ、と考えているという事実をより声高に主張するようになっている。
米国メディアが外国政府に矛先を向けるのが好きなのは、信じられないほど印象的だ。ロシア、中国、イラン、ジャーナリストを尊重しない政府、ジャーナリストを投獄している政府、報道の自由を攻撃している政府だ。その目と鼻の先で、自国の政府が報道の自由にとって史上最も危険な(バイデン)大統領を誕生させようとしている。そして、好むと好まざるとにかかわらず、彼ら全員の合計よりも多くの大スクープを担当した人物を投獄しようとしている。
ドナルド・トランプ氏がツイッターでチャック・トッド氏やウルフ・ブリッツァー氏を侮辱するようなことは、報道の自由を脅かすものではないが、調査報道の中核的活動を犯罪化するような前例を作ろうとすることは、私が生きてきた中で最も重大な報道の自由であり、それこそがジュリアン・アサンジ氏の身柄引き渡しなのだ。このような進展があれば、引き続きお伝えしていく。アサンジ氏が米国に来なければならない時期が非常に近づいており、これがどのように展開するのか見守りたいと思う。
まとめ
- オーストラリア人のジュリアン・アサンジ氏は1917年につくられた米国の法律・スパイ活動法に基づき、トランプ政権でMAGAイデオロギーの信奉者であるかのように見せかけながらアメリカの戦争をことごとく支持していたマイク・ポンペオ氏(当時CIA長官)により、起訴された。
- アサンジ氏はジャーナリストとしての役割を果たしており、彼を起訴することは報道の自由を危険にさらすものである。
- バイデン政権がアサンジ氏の身柄を米国に引き渡させる動きをしているが、これは報道の自由に対する重大な脅威となる。
- 米国がアサンジ氏を諦めるか、あるいは、アサンジ氏はオーストラリア市民であるためオーストラリア政府が彼を保護することが求められている。応援する人々はいるが、重大な局面を迎えようとしている。